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特集− 土曜レポート
「くま川鉄道“あと3年の命”。再生に向け取り組む姿を追う」

 存続か廃止か検討始まる
各駅の魅力アップを推進

 開業20年の節目を迎えるくま川鉄道(株)(厚地洋一社長)は、人吉湯前間を運行する第3セクターのローカル線。肥薩線全線開通100周年、SL人吉の運行で賑わうが、19年連続の赤字により存続の危機を迎えている。「あと3年の命」。再生に向けて取り組む姿を追った。  (東 憲吾)

●枯渇する基金
 地上設備や車両の老朽化により増える保存費、利用者減による収入の落ち込みなどで、郡市の市町村や住民、事業所などから集まった基金5億6000万円から赤字を補てん。
 当初は予定どおりに金利のみでやりくりできていた。しかし、バブル崩壊などにより平成13年度から原資を取り崩すことに。同20年度は9900万円の赤字を補てんした。
 残った使える基金は1億8900万円までに減り、3年後に底を突く見通し。厚地社長(67)は「返せないのに借りるわけにいかない。このままだと廃止路線だ」と、危機感を募らせる。
 存続か廃止か。代表取締役の田中信孝人吉市長は「高校生の通学手段を奪うわけにはいかない。関係市町村は存続に共通認識を持っている」。ことし4月設立の地域の公共交通を考える法定協議会「人吉球磨地域交通活性化協議会」で検討が始まった。

●「マイレールの意識持って」
 「郡市民1人ひとりがマイレール意識を持たないと廃止になる」―。
 民間初の社長就任から1年が過ぎた厚地社長。厳しい現状にふれ、地域に重点を置いた考えにがらりと変わった。
 地域住民に親しんでもらおうと、就任からこれまでにない仕掛けを次々に打ち出す。ギャラリーに見立てた「写真列車」、“くま鉄”を愛するボランティア団体「がまんちょ会」、65歳以上を対象にした大幅割引の定期券「パスポートくま」など。
 「各駅の魅力アップを狙う。さらにウオーキングトレインなど、皆さんのアドバイスを受け、石の上にも3年で頑張る」と厚地社長。徐々にマイレール意識が浸透しているが、なかなか数値には表れない状況だ。

●厳しい状況
 昨年度は少子化に伴い、乗客全体の8割を占める沿線五高校の通学生が開業時より40%減少。これによる収入の落ち込みは今後も続くと見られる。
 老朽化により増額する線路と電路(踏切)、車両の保存費合計8300万円、世界的な原油価格の高騰による燃料費の増加が経営を圧迫した。
 今後、20年を迎えた車両8両の更新に1台1億2000万円、老朽化する橋梁8基の補修9000万円と、さらに厳しい状況が迫る。
 厚地社長は「自助努力ではなし得ない経費が増加している」と頭を抱える。「人件費もかなり低く、せめて平均に給料アップも考えているが本当に難しい」。

●自治体の負担
 法定協議会で策定された計画が国に認められると支援を受けられる。
 そうすれば、巨額な車両の更新費用も国、県、市町村が3分の1ずつの負担になるなど、同鉄道は生き残る道が見えてくる。今年度中には計画を策定する方針だ。
 存続の1つとして、厚地社長が考える手段が「上下分離方式」。自治体が「下」の地上設備を保有し、固定資産税も支払う。同鉄道は「上」の車両の保存費だけで済むことになる。
 昨年度で見ると、「下」の部分は線路と踏切の保存費4650万円、諸税の87%を占める固定資産税750万円の合計5400万円になる。
 「収支は差し引きゼロにはならないが、残る赤字数100万円は経営努力。法定協議会で協議してもらいたい」と厚地社長。
 しかし、市町村は財政難の中、路線バスにも負担金を支払っている。森本完一錦町長は「鉄道とバスの共倒れになる。あえて言うなら高校生に必要だからといって、多額の費用を使っても良いのか。どちらかを残すのでは」と警鐘を鳴らす。

●「地域の宝」
 27日早朝、湯前駅発の2両編成の列車には高校生、高齢者ら20人近くが乗車。隣同士に座って会話を楽しみ、あめ玉を配るおばあちゃんたちが、昔と変わらないほのぼのとした風景を見せていた。
 人吉温泉駅に到着。「おはようございます」と職員らが笑顔で出迎える。いつもと変わらない毎日。しかし、「このままずっとあるものだと思っていた。とても大切なのになくなるかもしれないなんて」と、駅から病院に向かう高齢の男性は驚きを隠せなかった。
 「皆さん1人ひとりが年に1回でも乗ってもらい、国、県、市町村、住民で“宝”を何とか守ってほしい」―。厚地社長は呼び掛ける。

(6月27日掲載 )
 
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